機械修理のプロ、レニショーのマルチアクシスキャリブレータを導入しサービスを拡大
キャリブレーションサービスを提供する事業者としての競争力を強化する。そんな方針を掲げた KES Machine 社はレニショーとの関係強化に乗り出した。同社が導入したのがレニショーの XM-60 と XM-600 である。高精度なデータを短時間で取得できるようになり、高品質なキャリブレーションサービスとプローブ計測サービスを提供できる体制が整った。
背景
ポーランドから居を移した Greg Kordalski 氏が KES Machine 社をコネチカット州 (アメリカ合衆国) で設立したのは 2000 年のことだ。以来、認証を受けたキャリブレーションと修理サービスを武器に、エンジニアリング企業やメーカーを顧客の生産性向上やダウンタイム短縮に貢献している。幾何誤差、送りねじの誤差、繰り返し精度に関する懸念といったことを解決し、時には誤差診断により重大な問題の発生を防いだこともある。
同社は当初 CNC のサービス業務に重点的に取り組んでいたが、2008 年にレニショーの ML10 レーザーシステムを導入し、キャリブレーション事業を開始した。コネチカット州の Newington に拠点を置く同社は、主に航空機、防衛、原子力、医療といった産業の工作機械メーカーや輸入業者、販社、エンドユーザーを相手に地域をまたいだビジネスを展開している。
2019 年、KES 社は現地での製造業をサポートすべく、ポーランドに支社を開設した。「生まれ故郷のポーランドには頻繁に訪れていました。欧州の拠点として最初の支社を開く地にポーランドを選んだのはそんな理由からです」(Kordalski 氏、KES 社創業者)。「かといって、当社のこれからの欧州ビジネスをポーランドだけに限定するというわけではありません」
同社では、対象製品を引き取っての自社設備での修理や客先現場での修理といったサービスを提供している。またそれだけでなく、機器の精度や稼働率を最適に保つための月次メンテナンスというものも請け負っている。2016 年、ISO 17025 認証を取得し、キャリブレーションサービスを提供する企業としての公のお墨付きを得た。
Kordalski 氏は以下のように述べる。「ISO 17025 認証こそ、我々がお客様に確固としたサービスを提供できるという証です。我々は業界の求める基準や要件に沿って試験やキャリブレーションを行っています。基準や要件を守ることで、エンジニアには付加価値の高いサービスを提供でき、そしてお客様に最新機器で最高のサービスを提供できるのです」
課題
加工品の品質は製造に用いる機械の性能に左右される。機械に含まれる誤差を知らないままでは、仕様どおりに加工できているかが、製造工程終わって検査するまでわからない。KES 社が相手しているのは、航空機や防衛、医療といった高精度が求められる業界である。そういった業界の各企業に、キャリブレーションサービスを提供する会社として頼りにされる存在になり、求められるソリューションを提供することを同社では目標にしている。この目標を達成する施策の一環として行ったのが、工作機械の空間補正を行えるシステムについての市場調査である。
「過去数年間、メーカー各社が加工システムの自動化促進に投資する様子を目の当たりにしてきました。自動加工システムの成否を握るのはプローブとキャリブレーションです。そこで我々は、プローブ計測システムと各機器の年次キャリブレーションに大きな需要あることを見出したのです」(Kordalski 氏)
「我々は常に最先端技術を取り入れています。精度、ソフトウェアそしてサポート。新たなツールを導入する際、これらの要素を重視します。精度と効率にプラスになる装置が見つかれば、導入に踏み切ります」
CNC 工作機械と XL-80 レーザーシステム
レニショーさんのアメリカオフィスといい関係を築けていたので、ポーランド支社を開設するときに、レニショーのポーランドオフィスともすぐにコンタクトを取りました。ポーランドで XM-60 を採用したのは我々が初でした。我々は、これからヨーロッパ市場でお客様を開拓していきたいという大きな目標を掲げています。
KES Machine 社 (アメリカ合衆国)
KES 社ではレニショー製の工作機械用プローブ計測も多数使われている
レニショー QC20 ボールバーシステム
解決策:
レニショーは KES 社と長年にわたる関係を築いている。Kordalski 氏は以下のように話す。「レニショーさんは我々の興味をかきたてる新製品を開発してくれます。長年の付き合いがあるのはそういう理由からです」
KES 社は設立当初、レニショーから ML10 レーザーシステムと QC10 ボールバーを購入した。その後も、XL-80 レーザーシステム、XR20 回転軸割り出し角度測定装置、オフアクシスロータリソフトウェア、QC20 ボールバーシステムといったレニショー製品を各種導入している。加えて、プローブやツールセッター、工具折損検出システムなどレニショーの工作機械用製品も多数採用しており、現場ではレニショー製品が多数活躍している。
KES 社がここ最近で購入したものが XM-60 と XM-600 である。使いやすさと柔軟性、そして膨大な量のデータを取得可能であることがその決め手であった。同社において CNC 工作機械と三次元測定機の空間補正に使用されており、1 回セットアップするだけで直線軸に沿った 6 自由度の誤差を同時測定することができる。1 回のデータ取得で、軸に関するあらゆる幾何誤差を測定するパワフルな診断ツールである。
また、XM-600 は機能面で強化されており、レニショーの UCC コントローラとダイレクトに通信を行える。もちろん CARTO ソフトウェアスイートとの連携も可能だ。KES 社のように工作機械と三次元測定機の両方を扱う企業にとって、理想的なキャリブレーションソリューションと言える。
レニショーアメリカオフィスで Marketing Manager を務める Jeffrey Seliga は、以下のように述べる。「レニショーでは、工作機械のパフォーマンス向上、稼働率の改善、計画的な予知保全の確立といった点で威力を発揮するキャリブレーション製品を多種多様に展開しています。XM-60 を導入したことで、KES 社では位置決め、ピッチ、水平方向の真直度、垂直方向の真直度の測定にかかる時間を大幅に短縮することができました」
結果
空間補正は、アメリカでは比較的新しいプロセスです。ですがここ 2 年、当社の業績は順調に推移しています。お客様に提供できるサポートの内容はよくなっていますし、機械精度を確保するためにお客様が望むソリューションを提供できるようにもなりました。事実、稼働を始めるまさにそのときから加工精度が確保すべく、新しい機械の据付け時に空間補正を実施するお客様もいらっしゃい'
KES Machine 社 (アメリカ合衆国)
「当社で使っている機器の 8 割はレニショーさんのものではないでしょうか」(Kordalski 氏)。「他社製のシステムも調査しますが、最高の技術を、と考えるとレニショーさんの製品に行きつくのがほとんどです。最近では XK10 アライメントレーザーシステムの例があります。まだ導入して間もないですが、主軸方向のテストや機械の据付け時にその有効性を実感しています。真直度や直角度の調整に役に立っているのです」
空間補正に XM-600 を導入した同社は、すぐにでも 三次元測定機のキャリブレーションサービスを顧客に展開していく考えだ。またキャリブレーションサービスだけでなく、XM-600 がレニショーの UCC コントローラと直接通信可能である点を活かし、レニショー製三次元測定機のサポートも行っていく見込みである。XM-60 と XM-600 がリリースされる以前の数年、KES 社では、位置決め精度、ピッチ、ヨーおよびロールの測定に複数の器具や機器を使っていた。XM-60 ならそれらの測定を 1 台で解決できるようになっただけでなく、軸全長にわたっての水平方向と垂直方向の真直度も同時に測定することができる。かつて 2～4 時間かかってた測定作業が、機械軸の長さにもよるものの、30 分以下にまで短縮した。
また、機械誤差の診断にも活用可能である。KES 社は CARTO と自社のカスタムソフトウェアを組み合わせて使い、プロセスの簡略化を図っている。補正プロセスでは CARTO の「カット＆ペースト」機能が効果的であり、またレポート作成機能も時間の節約に一役買っている。
「レニショーさんはサポートも非常に優れています。製品を初めて導入した際、レニショーさんは当社の現場まで来てシステムと機能を精査してくれました。すぐにサポート対応してくれますし、ソフトウェアについて定期的にフィードバックや提案がないかと尋ねてくれます。毎日レニショーさんの装置とソフトウェアを使っているので、うちのチームからは積極的に提案が出ています。バージョンアップしたときに、自分の提案内容が反映されているとうれしくなりますね」(Kordalski 氏)
CNC 工作機械測定機上のレニショー XM-60 マルチアクシスキャリブレータ
