ランボルギーニ社、レニショー工具折損検出システムの導入で年間 15 万ユーロのコスト節減

工作機械当たりの工具折損検出時間を67%短縮

マザックFMS（モジュラテックシステム）加工生産セルでは、 トランスミッション（変速機）およびギアボックス用コンポーネントを生産、どの部品にもねじ切り加工が大量に必要とされます。加工時間のほぼ 70% は、この穴あけ加工とねじ切り加工に費やされ、サイズM5 ～ M18のドリル タップの折損は頻繁に発生します。この折損を見逃すとスクラップの発生へとつながり、如いては加工した時間が無駄となってしまいます。生産技術エンジニア、ルイジ・ガリンベルティ氏は述べます、「機械加工の生産ラインは完全に自動化されており、タップやドリルに折損が起こっても作業員は気が付きません。そのため、何年も前からマザック加工機内に装備の工具折損検出装置を使用してきました。折損が検出されないと、コンポーネントに折れた破片が入り込んだりすることがありますし、折損の後はきちんと加工ができません。他のコンポーネントを損傷させたりすることも考えられます。」

しかしながら、マザック機に当初から装備の工具折損検出システムには難がありました。ひとつの工具のチェックに 21 秒以上要し、時間がかかりすぎることでした。そのため、FMS 生産セルのマシニングセンター4台全てに、レニショーの TRS2 工具計測システムを後付することにしました。ガリンベルティ氏は続けます、「ここでの加工には大量の工具が使用され、その全部にチェックが必要です。従って、工具チェックの時間を短縮できれば、時間と経費が大幅に節減できることになります。コンポーネントそれぞれで工具チェックが少なくとも34回必要ですが、TRS2 システムを使用すると 7 秒もかからずに工具計測が完了します。どのパーツにおいてもチェックサイクル時間が短縮し、平均すると 7.5 分の短縮。これはサイクル時間全体の約 6% に相当します。」

非接触式レーザー検出

TRS2 は工具の折損検出専用の非接触式レーザー工具計測システムで、工作機械が加工サイクル実行時に、完全自動で工具の長さをモニターすることが可能です。回転する切削工具の先端の有無を 1 秒以下で検出でき、前の加工サイクルで工具折損が発生した場合、TRS２システムがそれを検出して工作機械が直ちにそれを是正できるため、折損による損害が延々と拡大し続けることが避けられます。レーザー光の送信部と受信部が内部に統合されたシングルユニットのシステムですので、取り付けが非常にシンプル。別々のふたつのユニットからなる工具計測システムでのような、ユニットの位置合わせの必要はありません。

レニショー TRS2 システムは、工具の折損を検出すると、アラームを発生し加工プログラムを停止させます。この時点で、例えば、ロジック（条件分岐）設定/機能などを使用して、同一機種の別の加工機に切り替えて生産活動を継続させることも可能です。しかし、SAME DEUTZ-FAHR 社の生産技術エンジニアは、工程を一旦停止させ、オペレーターが加工パーツをチェックして、折損工具による加工不良や損傷が以後発生しないことを確認する手順で進めています。

コスト削減と投資の効果は一目瞭然

TRS2 工具計測システムの導入を決定したことで大幅なサイクル時間の短縮がもたらされ、この投資は極めて大きな経済効果となったとガリンベルティ氏は説明します、「機械の運転コストを基にコストの詳細を分析した結果、初年度で 15 万ユーロのコスト削減がもたらされることがわかりました。それは、工具のチェックという直接加工に費やされていなかった時間のほとんどを今度は、実際のコンポーネントの加工時間として使用できるようになったからです。TRS2 導入のための初期投資は、わずか 5 ヶ月で回収することができました」

工具折損検出システムを新しいのに入れ替えるプロジェクトは、全体的なコスト削減推進活動の一環として行われました。ガリンベルティ氏は続けます、「当初、加工の生産性向上を目指して、オプションをいくつか検討しました。しかし、その効果で群を抜いていたのがTRS２システムで、他のオプションの場合、投資を回収するのにもっともっと長い期間かかっていたでしょう。」

TRS2 工具折損検出ルーチン

TRS2 システムの優れた特長はその高速性ですが、工具が折損したことを確実にキャッチし、折損を見逃がさないこともまた重要です。TRS2はレーザー光を照射し、その光路に工具の先端がかかるように工具を移動させます。工具の回転速度は予め定められた幾つかの回転速度の中から選びます。TRS２は、工具の切削刃面に当たって受信/受光部に反射してくるレーザー光のパターンから工具の有無を判断します。取り付けの際のTRS２から照射されるレーザー光の向きについては、工作機械の作業空間内の都合で決めていただきますが、余計な機械の移動をできるだけ少なくするため、工作機械が工具交換で移動するパスに対し、それを横切る方向がしばしば使用されます。

正しい本来の工具長は、先に工具計測ルーチンで計測し、機械内に保存されます。従って、工作機械は どの位置でTRS2 工具計測システムが、工具の先端を検知するかを正確に把握しています。加工プログラムを作成するエンジニアは、どれだけ頻繁に加工で工具折損が起こるかの知識と経験を元に、工具計測チェックの頻度を選定します。工具チェックは加工の最中でも可能ですが、多くの場合作業が終了した後、工具をツールマガジンに戻す移動の途中で実行します。

生産効率と品質に最も適したオートメーション

SAME DEUTZ-FAHR 社は、「高品質を維持しながらコストを最小限に留める」ための練り上げた生産理念を持っています。生産技術マネジャー、マッシミリアーノ・テンペスタ氏は説明します、「当社では、製品のみならずエンジニアリング/生産技術の基本原則においても、共通のプラットフォームを使用する戦略を採用しており、全ての工場でエンジニアリングのノーハウを共有するように、イタリア本社がコーディネートします。それぞれの機種の変動する需要に則して必要量のみを製造し、コンポーネントの在庫量を必要最低限に留めるようにしています。これを可能にしているのが、非常に柔軟性に富んだマザック FMSセルでの機械加工です。このセルでトランスミッションとギアボックス用各種パーツが生産され、このセルでトランスミッションとギアボックス用各種パーツが生産され、 これらパーツと他所からのパーツが、『ジャスト・イン・タイム（看板）』方式で組立てラインに集結するようコーディネートします。」