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5 軸 CMM 計測で好調を維持

カワサキの米国ミズーリ州にあるメアリヴィル工場では、スキャニングプローブを使用することで、形状データ収集と加工セルへのフィードバックを高速化し、CMM の治具を削減して、プローブのキャリブレーション時間を数時間単位から数分間単位に短縮しました。計測スループットと柔軟性を向上したことで、製造と研究開発部門に迅速なデータを可能にする一方で、スキャニング CMM により究極的にはギヤやカムリフトの検査システムを排除できる可能性があります。

オートバイファンにその製品を楽しんでもらうことを願って「Let the good times roll」をキャッチコピーにするカワサキでは、米国ミズーリ州メアリヴィルにある小型エンジン工場の検査活動を大幅に改善しています。この工場では、5 軸スキャニングプローブシステムを使用することで、CMM の検査時間とプローブキャリブレーション時間を大幅に短縮して、小型エンジンコンポーネント加工に関する QC(品質管理)からのフィードバックを高速化しています。カワサキは、SP25M スキャニングプローブを使用する 2つの PH10 首振りヘッドを搭載した伝統的な 3 軸 CMM を、レニショーの 5 軸 REVO® システムを搭載したミツトヨの三次元測定機 Crysta-Apex 121210 に切り替えました。この結果、多くのスキャニングを必要とするアプリケーションの検査時間を半減し、カスタムプローブ構成の必要性を排除しただけでなく、それまで 6 ~ 7 時間を要していたプローブキャリブレーション時間を 45 分に短縮し、大量の形状計測データの収集という新しい能力が得られたために、パーツの品質を向上することができました。中でも最も重要なのは、QC 部門がREVO システムにより 計測スループット、データ品質、柔軟性を大幅に向上し、製造および研究開発活動に対するその戦略上の貢献度が大きく高まったことです。

カワサキ のCMM ケースタディ - FX シリーズ小型エンジンのフライホイールを検査する REVO ヘッド

カワサキ製造システム

敷地面積 80 万平方メートルのカワサキのメアリヴィル工場は、1989 年に開設され、商業用および消費者用の芝刈り機の OEM だけでなく、ATV および Mule™ 多目的車を製造する同社の工場向けに、1000cc 以下のシングルシリンダーおよびツインシリンダーの空冷エンジンと水冷エンジンを製造しています。同工場では、アルミダイキャスト、プラスチック射出成形に加え、大量の機械加工、塗装、アセンブリ作業を行っています。さらにすべてのエンジン(年間約 50 万台)には、出荷前にランオフを行っています。

メアリヴィル工場の品質管理部門技術グループスーパーバイザーの JC・ワッツ氏は、次のように説明します。「この工場では、カワサキ製造システム(KPS)を使用しています。カワサキの品質およびエンジニアリング要件のレベルは、自動車業界の最高レベルに匹敵するものですが、私たちの工場では多種の製品 少量生産しています。」同工場には 50 の加工ラインが存在し、通常、開始マシンと終了マシンが反対側に置かれた U 字型の配置になっています。「主に一体形パーツの製造を行っており、複数のプロセスを実施する加工ラインを通してパーツが高速で送られます。」とワッツ氏は説明します。カワサキはカワサキ製のロボットを統合することで、多くのダイキャストと一部の加工作業を自動化しています。1 つのクランクケースラインでは、原材料のロードと完了パーツのアンロードにロボットが使用され、完了パーツがアセンブリ工程向けのインベントリに加えられます。ここでの加工パーツには、アルミニウム、鋳鉄、鉄鋼があります。

「高級車に使用される自動車のパワートレインと同様の公差を使用しており、アルミニウムパーツには 4 ~ 5 の主要プロセス、また鉄鋼パーツには 15 の主要プロセスが存在します。」とワッツ氏は公差について説明します。形状に数ミクロン単位の公差を使用したり、位置決めに 0.05mm という公差を使用するのも珍しいことではありません。

QC ラボは、125 種の大量生産パーツに加え、下請け業者から納品されたパーツや、開発用に製作されたパーツの検査にも責任を持っています。環境制御が行われたこのラボは、加工ラインの隣に配置されており、定常検査を行うパーツがカートやトレイン(何台かのトローリーカートを牽引する電気車両)で運び込まれます。ラインの変更時や問題が疑われる場合の重要なコンポーネントは、手で持ち込まれ、最優先で検査が行われます。

カワサキ のCMM ケースタデ - 稼働する REVO

5 軸スキャニングの利点

「私がここで働き始めた当時は、PH10 首振りヘッドと SP25 プローブを搭載した 2台の 3 軸 CMM と、固定式プローブを搭載した別の CMM を使用していました。」とワッツ氏は昔を振り返ります。「当時はプローブ構成を変更するのが面倒だっただけでなく、首振りヘッドを使用しても可能な検査が限られていました。その上、プローブ構成も実に様々で、キャリブレーションに 6 ~ 7 時間を要していたため、計測スループットにも影響がありました。私たちは業界標準以上のものを求めていたため、いくつかのオプションを検討したところ、5 軸 REVO システムが最も高速で柔軟性に優れているように思われただけでなく、カワサキのニーズに最も適していました。」

カワサキでは、2009 年に工場で REVO システムを取り付けたミツトヨ Crysta-Apex 121210 を購入しました。その後、2010 年に最初の機械ですべてのパートプログラムを稼働させるようになった後で、別の同じ機械にレトロフィットを行いました。

REVO 5 軸スキャニングプローブヘッドを使用すると、毎秒最大 6000 データポイントを収集できます。これは、フィットや形状を高精度で検証するために大量データの収集を必要とする自由局面や複雑な形状の高速高精度計測のために設計されており、垂直面と水平面に 1 つずつ、2つの回転軸を使用して無限の回転と位置決めを行えるようにしています。さらに、5 軸ソフトウェアが CMM のリニア軸と動きを同期しながら、計測ヘッドを駆動します。このソフトウェアのルックアヘッドアルゴリズムにより、プローブパスと CMM が調整された継続的な動きで駆動されます。このヘッドは、スタイラスの先端が毎秒最大 500mm のスキャニング速度でも常に変化する局面に接触するように、移動計測しながら配置を合わせます。

「SP25 はスキャニングプローブでしたが、3 軸 CMM ではスキャニング速度が遅すぎたため、95 パーセントはタッチプローブ計測に使用していました。」とワッツ氏は説明します。「タッチプローブ計測が不充分であることを示すいい例として、円柱とクランクの穴があります。直径 80 ~ 100mm、長さ 150mm の穴の配置を計測するために充分なデータポイントを正確に収集するのに、SP25 では時間がかかりすぎたため、機械のセットアップ時と設計部門から特別な要請があった場合に限ってこの検査を行っていました。現在では、計測するすべてのクランクケースに対して REVO で穴のスパイラルスキャンを行い、システムからソフトウェアに値を出力しています。このデータポイントのグラフをネットワーク経由で送信すると、QC、エンジニアリング、製造部門のすべての人がそれを使用でき、問題を視覚的に確認できるため、問題解決にも大きく役立っています。SP25 で 3 ~ 4 分かかっていた作業も、REVO により 10 秒で計測できるようになりました。」REVO スキャニングヘッドを使用することで、タッチプローブ計測を行う必要性も完全に排除されました。現在では検査の 95 パーセントにスキャニングを使用するようになり、以前のように時間がかからないことから、カワサキでは分析を行うコンピュータのスピードの限界にチャレンジするような大量のデータを収集できるようになりました。REVO プローブは、必要な場合に「ヘッドタッチ」プローブとして使用したり、伝統的な機械タッチプローブ計測に使用することも可能です。

「スキャン検査では、製造およびエンジニアリング部門のスタッフがデータの有効性に信頼を持つことができます。」とワッツ氏は付け加えます。「タッチプローブ計測では、7 ~ 8 ポイントしかサンプリングしない場合に 1 点でも汚れがあると、不完全な状態になり、その円の位置が完全に外れることがあります。当社では、タッチプローブで取得するデータ量のためにタッチプローブ計測では検出できない平面誤差と円柱の内径の例を文書にまとめており、工場の出荷前にこれらの問題を検出できても、そのパーツをスクラップとして処分していました。REVO のスキャニング能力では、時間を大幅にかけなくても、形状誤差を早期に検出できます。おかげで、早い段階から品質問題を特定して、より素早い対応を取れるようになりました。」

REVO のスキャニング能力では、時間を大幅にかけなくても、形状誤差を早期に検出できます。おかげで、早い段階から品質問題を特定して、より素早い対応を取れるようになりました。」

カワサキ (アメリカ合衆国)

プローブ構成を少なくして、柔軟性を向上

REVO を使用するメアリヴィル工場では、すべての大量生産パーツの計測に必要なプローブ構成が 2 つのみとなり、チェンジラックでカスタムプローブを使用するケースも特殊なアプリケーションのみに限定されるようになりました。REVO は無限の角度で位置決めできるために、特殊な治具を使用したり、どのプローブを使用するかを考慮する必要もなく計測できるようになったため、下請け業者からのパーツ用の特殊な構成も不要になりました。プローブ数の低減に伴い、キャリブレーション時間も 46 分前後に短縮されました。そのため、QC 部門の技術者はシフトごとにキャリブレーションを行わなくても、キャリブレーションをモニターするだけで済むようになりました。

「現在では、わずか 2 種類のプローブ構成ですべての大量生産パーツを計測できるようになりました。」とワッツ氏はいいます。「REVO ではスタイラスとワークの間で大きなアプローチ角度を保てるために、大型ボールスタイラスの構成を使用しなくても済みます。スキャン中、REVO ではこのアプローチ角度を維持することで、5mm の内径の計測に使用するのと同じスタイラスを使用して、スライラスが反ることもなく、円柱の内径などの大型円柱形状を測定することができます。」

REVO の柔軟性も、カワサキで時間を短縮できるようになった一因です。「どんなパーツでも、特殊なキャリブレーションを行うことなく、マシン上か限られた数の治具を使用して計測できます。」とワッツ氏は説明します。「カワサキでは、3 種類の治具ですべてのパーツを計測しています。REVO プローブは、初めに位置決めを行った後、自動的にオリエンテーションを行います。おかげで、パーツの配置による計測誤差の発生を心配することもなく、特殊な治具の使用を大幅に排除することができました。」

カワサキは、ミツトヨの Mcosmos 3.1 ソフトウェアを使用してすべての検査ルーチンのプログラミングを社内で行っています。REVO にアップグレードしたことに伴い、検査ルーチンのプログラミングも社内で開発したコーディングを使用したパラメータとモジュール式のプログラミングにシフトしました。これにより、同様のパーツに同じプログラムを使用できるようになります。「たとえば、カワサキで扱う 30 種類のクランクシャフトを例に取ると、そのサイズや位置が異なっても、すべてに同じ形状が搭載されているため、同じ検査プログラムを使用してすべてのパーツを計測することができます。」とワッツ氏はいいます。「これが REVO で得られた最も大きな利点の一つです。」REVO システムでは無限の角度が可能なため、形状のサイズや向きによってスタイラスがパーツ形状に干渉することを心配することなく、簡単にパラメータ式プログラムを作成することができます。プローブは、計測対象の形状に対して自動的に直角に配置されるため、プログラミングも簡素化されます。

カワサキの CMM ケーススタディ - カワサキのメアリヴィル工場にある Revo 搭載の CMM

高速検査により得られた優れたデータを QC から研究開発に活用

ワッツ氏は、3 軸から 5 軸プログラミングへの移行は難しくなく、あまり技術力のないプログラマーでも 3 軸と同様に REVO の検査プログラムを作成できるといいます。しかし、検査スピードを最適化するためには、できるだけヘッドの動きを使用することが重要です。「ヘッドの動きを使用することで、計測誤差を引き起こすことなくパーツを高速スキャンできます。」とワッツ氏は付け加えます。「REVO には限界が克服され多くの可能性が開けるため、プログラマーの技術力に関係なく速度面の利点を享受できます。」

検査結果は加工ラインに手動でフィードバックしたり、ラインの操作員がコンピュータネットワーク経由でローカルアクセスすることができます。「一部の検査レポートからマシニングセンターの座標系に直接オフセットをフィードバックできます。これにより、CNC 操作員はレポートのオフセット調整を読み取り、必要とされるオフセットを確実に指定することができます。」とワッツ氏は説明します。「カワサキでは、一部の「ベストフィット」アルゴリズムを活用しています。特に複雑なアルゴリズムを必要とするパーツに関しては、製造エンジニアと協力して、正確な調整を行い、同時に複数のプロセス調整を行えるようにしています。REVO を使用する以前はこの能力が限られていましたが、REVO によりパラメータ式のプログラミングを行えるようになったために、あらゆる領域に簡単にこの能力を拡張できるようになりました。

5 軸 CMM スキャニングは、速度、データ品質、検査能力の面でメアリヴィルの QC 部門にとって革新的なシステムだったとワッツ氏はいいます。「完全に同じ 2 台の機械を活用することで、大きな利点を享受できるようになりました。1 台の機械が故障したり、キャリブレーションのために停止していても、他の機械で重要なパーツを測定できるからです。大型パーツを小型の CMM に配置したり、難しい角度を必要とするパーツを対応できない機械で計測しようとしたりするのは QC ラボの役目だったため、QC ラボにとってこの点が大きな利点です。以前は、研究開発部門から特定の形状を計測するように要請されても、与えられた時間ではほとんど不可能なケースもよくありました。現在では、短時間でデータを提供できるだけでなく、スキャンしたデータに対する人々からの信頼性も高まっています。単純な検査スピードの向上に加えて、柔軟性、治具の低減、形状計測、パラメータ式プログラミングなどの要因がすべて相乗効果になっています。」

2 台の REVO 搭載 CMM で 5 万以上のパーツを製造しているメアリヴィル工場では、実用性が検証された場合には、ギアの検査とカムリフトに REVO システムの使用を拡大する計画があります。「カムリフト用のソフトウェアに独自のアルゴリズムとサブルーチンを開発していますが、これもローブ上のリフトを測定するために必要なプローブの角度のために、REVO システムなしでは実現できません。」

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